僕らの世界が終わる頃(彩坂美月)
そして、『夏の王国で目覚めない』と本作とは、「虚構と現実が混ざり合う」という点も共通する。それが彼女(勝手に女性だと思っているのだが)の強みなのだろう。「三島加深」もカメオ出演したしね。
「箱庭」と形容されるのは、中庭だけではなく学校生活そのものだ。
この物語を脳内で思い描くとき、自然と出身小中学校をつぎはぎして舞台を構築した私がいうのだから。
学校が舞台の小説の感想では何度も何度も書いてきたのでくり返しになるけれど、10代の彼ら彼女らにとってあの狭い世界がすべてなのだ。
そこから疎外されたら、いられなくなったら、それはもう――存在してはならないと思うしかないじゃないか。
ミステリ要素は少ないなあと思いながら読み進めていったら、終盤で怒濤のように伏線が回収されていった。
最初、渉がバスへ乗ろうとしても失敗するシーンは、「学校へ行きたくとも行けないこと」を描写しているのかと思った。
しかし、屋上での転落事件を防ぐために渉は自転車で学校へ向かっている。そこでおかしいなとは思いつつ、まさか邦彦が死んでいないとは思わなかった。
真犯人については、行動力から(神原以外の)大人の誰かなのだろうなと目星はついていた。
また、貴史が渉を隠し撮りしたことから(それはまったく別の理由によるものだったが)、貴史の同級生4人に疑いの目は向いていった(さすがにあの描写をしておいて真犯人も貴史でしたー、はないだろうから実質3人か)。
中盤で出てくる麻衣子のブログに書かれている「恋人」は、「麻衣子が勝手につきあっていると思っている貴史」かトシのどちらかかと思っていたが、まったくの他人だったね。トシとくっつけ!
それにしても、「貴史が犯人ではないか?」と疑わせるミスリードが巧い。読者は、「こんな描写でまさか貴史が犯人だといいだしたりしないよな?」と思っている。序盤に貴史が怪しいという描写を盛り込むことで、逆に貴史を容疑者から外させた手腕は見事だ。
それぞれの恋心もひりつくように熱い。
夏の日射しの下で、様々な思惑が交錯したこの事件。各人が落ち着いたら、また笑って過ごせるようになってほしい。
だって、この作品に殺人鬼などいないのだから。
それぞれの夏の箱庭は、この夏の出来事を背に、少し拡張されただろうか。
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