夕暮れ密室(村崎友)
年をとってしまったら、後ろを振り返ることばかりだ。
夏の空気をまだ孕んだ文化祭前夜。
私の母校の学園祭と時期が同じということもあって、描写される空気は嫌というほど肌に刺激を与えた。天文部の話から、調べれば2009年が舞台だとわかる。私と1歳しか違わない彼ら。
そんな浮足立った校内で、不可解な密室殺人事件が起きたのだ。
これは邪道なのだが、章立て(とページ数)から犯人が百瀬だとわかってしまうのが惜しいところ。
それでも、密室の謎や動機は読み進めなければわからなかったし、何より最後の試合でわざとレシーブミスをしたという痛切な想いが語られるところは実際に読まなければ意味がない。
久保田が述べる「奇蹟」理論は、読者への推理を促すものでもある。
密室を出現させるために、「空気の割合が重要なのだ」と気づかせてくれるからだ。
犯行の動機は驚くほど呆気ないものだが、それだけに高校生らしい青さと泥臭さがある。
大人になってからしか理解しえないことだが、学生の間は自分でも驚くくらいに世間が狭く見えているのだ。たとえば、「世間」の構成要員が二人しかいないと錯覚しうるほどに――。
彼らは、みな津々見市という密室に囚われていた。群像劇という手法をとることで、それがより克明に描き出されていたと思う。
岡山市は全国的に見ればそんなに田舎でもないけれど、それでも私は県外の、それも岡山より都会の大学に進学した。私の場合は故郷が厭だったというより単に京都で一人暮らしをしたかっただけなのだが、狭い場処にとらわれていたという点では同じなのかもしれない。
- at 01:27
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